熊になっちまった

仇は取った

　あの資産家殺害事件。それに娘は巻き込まれた。
　娘が結婚した男。好青年だった。そして、彼の父親は資産家で地方都市の有力者。これだけ聞くと、結構いい条件のように思える。
　だが、父親は保守的な考えと頑固さ故、嫌われることも多かった。特に若い連中から嫌われていたらしい。
　だから、当初は結婚を許すべきか否か迷っていたのだが、父親とは同居せず、距離を取るというので、結局、結婚を許した。
　きっと、娘は幸せだったはずだ。
　だが、あの日……
　里帰りした夫と共に娘はあの家にいた。そして、そこに入ってきた強盗に殺されたのだ。夫と義父、義母と共に。
　強盗は色々なものを盗んだらしい。被害者の財布やアクセサリー、金庫の中身等々……
　家の中にいた人間全員が死んだから、目撃者不在かと思いきや、そうは問屋が卸さなかった。
　金庫を置いてある部屋に防犯カメラがあり、犯人の姿を捉えていた。この時、犯人は変装していたから、素顔まではわからなかった。
　だが、防犯カメラはレコーダーとセットになっており、音声も捉えていたのだ。