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礼儀正しい青年
シンプルな部屋の中。
青年は心配して、
「大丈夫ですか?」
という一言を聞いて、あの少女だと確信した。
話し方、口調、声の出し方。あの時、初めてかけてもらった言葉はこれだ。
僕は黙って青年を見つめると困った顔をされてしまった。
僕はほっとし、やっとこの旅が終わったんだと思ったら涙が急に零れた。
すると青年は心配して、さらに、
「どこか痛みますか?」
と聞いてくる。
僕は少し時間がかかったが、頑張って、
「大丈夫です」
と答えた。
青年は僕が泣き止むまで待ってくれた。
この表情と声を聞いたら分かる。僕のことは覚えていない。
落ち着いた頃、家はどこか、送りますか?と聞いてきたので僕は、
「いえ、旅人なので大丈夫です」
と答えた。
嘘では無い。
これ以上考えるとまた涙が出そうになったのでやめておいた。
青年の名前はたすく。16歳。祖母と2人暮しで、店をやってのんびり暮らしているらしい。
僕は元気になるまでそこで生活することになった。
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