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◆ ◆ ◆
鈍行列車に乗って、大都市まで出て、目的地であるアパートに辿り着いたのは日付が変わった後だった。
ちゃんとアパートを借りる契約が通っていて本当に良かったと思う。
部屋は狭いが、簡易的なキッチンスペースがついていて、シャワーもある。質素ではあるが、ベッドも先に部屋に入れてあった。
「あぁぁあ……、疲れた……」
崩れるようにベッドに倒れ込む。
寝心地はイマイチだが、この先、上手く金が稼げるようになれば、新調することも出来るだろう。
今日はこのまま眠って、明日の朝、いや、もう今日の朝か、目覚めたらシャワーを浴びよう。瞼が重い。水に沈むように意識が遠退いていく。
「……ンッ、……ぁんっ」
――は?
突然、ある音が聞こえてきて、俺はパッと目を見開いた。
人の声だ。女の声。
「……あ、んっ、んんっ……」
気のせいじゃない。聞こえる、隣の部屋から確実に女の喘ぎ声が聞こえる。
「まじかよ……」
俺はベッドの上で文字通り頭を抱えた。
こんなに音が聞こえるのに、こんな遅い時間に何してくれてんだよ。いや、俺の耳が良いのがいけないのか?
「あんっ、や、ン、あんっ!」
にしても、声でかすぎるだろ。というか、どんどんでかくなっていってる気がする。
このままじゃ眠れねぇ。
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