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「光の刃も、その青いオーラも。膨大な魔力を使う」
普段から身体強化の魔法を使っているマルクエンですら。戦い続けると、動力が切れたかのように、こうなってしまうようだ。
「お話になりませんね。今日はここまでです」
「も、申し訳ない」
指の一本も動かせないマルクエンは蚊の鳴くような声で言った。
「私は行きます。しばらくそこで反省なさい」
ヴィシソワはどこかへ飛び去ってしまう。マルクエンは未熟さと惨めさを感じながらうつ伏せに地面に横たわっていた。
昼前に魔力を殆ど使ってしまったとは言え、屈辱的だ。情けなさを感じる。
「宿敵!! 居るの!?」
声が聞こえる。ラミッタだ。
「宿敵!!」
一歩一歩階段を降り、闘技場の中で倒れているマルクエンを見ると、ラミッタは駆け寄ろうとした。
だが、上手く体が動かず、つまずいて転んでしまう。
「ラミッタ!? 大丈夫か!?」
姿はうつ伏せになっているので見えないが、大きな音は聞こえた。
だが、マルクエンの絞り出した声はラミッタに聞こえていないようだ。
立ち上がり、ラミッタはマルクエンの元までやって来る。
「宿敵!! 無事なの!? 宿敵!?」
「あぁ、大丈夫だ」
「何が大丈夫なのよ!!」
マルクエンの弱々しい声を聞いて、ラミッタはそう言う。
「魔力切れだ。情けない」
「……。情けなくなんか無いわ。本当に情けないのは気を失っていた私よ」
「ラミッタ……」
マルクエンを担いで部屋に連れて行こうとするラミッタだったが。今は引きずる元気すら無い。
「ラミッタ。大丈夫だ。動けるようになったら部屋に戻る」
そんな言葉を聞いているのかいないのか、ラミッタはマルクエンを横から押して、やっとの思いで仰向けにさせる。
上半身を起こさせ、頭の下に自分の膝を滑り込ませた。
マルクエンはラミッタの顔が見えた。優しそうな、泣きそうな表情をしている。
「ラミッタ……?」
マルクエンは今、ラミッタに膝枕をされている。
「ラミッタ。お前が大変だろう。私は大丈夫だから……」
「うるさい」
ラミッタの膝は、暖かくて柔らかくて、優しさに包まれている気分だ。
何だか心地の良い匂いまでする気がする。
「何だか、心地よくてこのまま寝てしまいそうだ」
ハハッと力なくマルクエンが笑うとラミッタはそっぽを向く。
「……いいから」
「ん?」
「寝ても……、いいから」
マルクエンは仰向けでラミッタの顔を見ながら言う。
「そうだな、子守唄でも欲しい所だな」
ラミッタは何かを考えてから。
「地に生まれし 愛しき我が子よ」
歌を歌い始めた。マルクエンは驚いて目を丸くする。
「ら、ラミッタ!?」
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