修行

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 顔をしかめてマルクエンは突撃する。剣を大きく振り上げ、ありったけの力を防御壁に叩き込んだ。  ピシリとドームにヒビが入り、ガラガラと崩れ落ちる。  ラミッタは再度詠唱を始め、魔法を打ち下ろそうとするが。 「二度、同じ手は喰らいませんよ」  高速でヴィシソワが空を飛び、ラミッタの元まで近付く。 「くっ!!」  詠唱を中止し、ラミッタは剣を構え応戦した。  カンキンと剣と槍がぶつかり合う。  ラミッタは少しずつ後退しながら、地上に降り立つ。  そこで待ち構えていたマルクエンはヴィシソワの背後を取った。 「必ず二人で連携し、戦う事を考えるのはよし。ですが」  ヴィシソワは槍でラミッタの剣を弾き飛ばし、マルクエンを黒い魔法の剣で包囲する。 「まだまだです」  ラミッタは悔しそうな顔をし、マルクエンはがっくりと肩を落とした。  ヴィシソワとの修行が始まり、一週間が経った。  マルクエンとラミッタの連携も、個々の能力も凄まじい勢いで成長している。  だが、毎回あと一歩ヴィシソワに及ばない。  今日も限界近くまで戦い、膝をつくラミッタ。 「はぁはぁ……」 「今日はここまでとしますか。明日の訓練はお休みです」 「休みですか?」  (かろ)うじて立っているマルクエンが聞き返す。 「えぇ、明日は国のお祭りがありますからね」 「お祭りですか?」 「建国記念日ですよ。日中は城が式典で忙しくなります。明日の一日を使ってよく休むことですね」  内心助かったと思う気持ちが少しあるマルクエン。このままでは本当に倒れたまま動けなくなりそうだった。 「この修行に明け暮れて、そんなのちっとも知らなかったわ……」 「私も、明日は大事な用事がありますので」  そうヴィシソワが言い残し、今日の修行は終わる。  建国記念日、朝になりマルクエンとラミッタは筋肉痛に蝕まれる体を無理に起こす。  来客に警備に城はいつも以上に騒がしかった。  国王の演説を見届けてから、マルクエンとラミッタは落ち合って、城を抜ける。  その頃には、すっかり昼過ぎぐらいになっていた。 「何か屋台で美味しいものでも食べましょう……って」  城から出てくる見覚えのある人物にラミッタは目が行く。 「あれって、ヴィシソワさんか?」  ヴィシソワと、フードを深く被った女性が隣を歩いている。
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