亜人の森

2/18
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/212ページ
「魔人と言いましたか? それは誤解です!」 「嘘つけ、私はソイツが空飛ぶの見た」  曲刀を両手に持って猫耳の女は敵意を剥き出しにする。 「私達は勇者よ。この森の箱を壊しに来たわ」 「黙れ!!!」  常人の数倍ある速さで突っ込んでくる猫耳の女。  だが、マルクエンの動体視力の前には無力に近かった。  一瞬で両手の剣を弾き飛ばし、右手を掴んで後ろに回してねじり上げる。 「なっ!!」 「ちょっと話を聞いてくれますか?」 「バインド!!」  ラミッタは魔法で猫耳の女を拘束した。身動きができなくなり、倒れそうになるが、マルクエンが支え、ゆっくり地面に置かれる。 「離せ!! 魔人!!」 「だから違うって言ってるでしょ」  ラミッタは国から発行された勇者の証明書を提示して言う。 「何だそれは!!」 「勇者の証明書よ、知らないの?」 「そんなもの知るか!!」  どうしたものかとマルクエンとラミッタが考えていると、森の奥から何かが走ってきた。  森を縫うように駆けて来たのは亜人の群れだ。 「セロラ!! どうした!?」 「コラー!! 魔人だ!!」  魔人と聞いて亜人の群れは武器を構える。誤解が誤解を生んでしまい、マルクエンとラミッタは頭を抱えた。 「違います! 我々は勇者です!!」 「勇者であれば証明書を持っているはず!!」 「あるわよ、これよ!!」  距離があったが、視力が良いのか提示されたそれをまじまじと見つめる。 「ラミッタ・ピラ……。マルクエン・クライス……。村に来るっていう勇者と同じ名前だ」 「金髪と白い鎧、茶髪と顔に切り傷。金色の剣。特徴も一致している……」  コラーと呼ばれた亜人の男は独り言を呟く。 「これは……。失礼しました!!」 「コラー、本当に勇者か!? 私、この女が飛ぶの見たぞ!!」 「それなら、なおさら本物だ。ラミッタ様は空が飛べるらしい」 「ほ、ほんとか!?」  コラーはマルクエン達に駆け寄り、土下座をしてきた。 「同胞の無礼をお許しください!!!」  いきなりの事にあたふたするマルクエン。 「そ、そんな。頭を上げてください!!」  (がん)として頭を上げないコラー。マルクエンはしゃがんで肩を持ち、立ち上がらせた。  ラミッタも襲いかかってきたセロラという猫耳女の拘束を解く。 「こちらも誤解をさせてしまい申し訳ない」  互いに落ち着いた様なので、マルクエンは話し始める。 「勇者様、ごめんなさい」  セロラもすっかりシュンとして落ち込んでいた。 「いえいえ、仕方がないですよ」 「勇者様、凄い強い。箱壊して欲しい」 「えぇ、その為に来ましたので」  マルクエンが言うと、亜人達の顔が明るくなる。 「本当にありがとうございます!! では、早速ですが村までご案内致します!!」  コラーはそう言って先導してくれたので、マルクエンは馬車を走らせた。  しばらくすると、森の中が開け、村が見える。
/212ページ

最初のコメントを投稿しよう!