真っ白な世界

6/6
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
タフって。 新入社員だと先輩とかの絡みで気を使うと思うのですが。 「新入社員を舐めるな、隆哉。」 私の思った通り、櫂さんは呆れたように溜息をつく。 「え、だって俺ボウソウ…………、いや。ゴホンゴホン。」 暴走族の総長だったからを言いそうになった後藤さんは、私を見て急に咳き込みだす。 ん?ボウソウ?って何ですか。 記憶を失っているせいか、そういう話はわからない私は首を傾けた。 事情を知っている櫂さんや紅葉さんは顔を引き攣らせているし。 なんなんだろう。 私の疑問が顔に出たのか、櫂さんと紅葉さんが困ったように顔を見合わせた。 「隆哉、海鈴ちゃんは記憶を失っているのよ?発言には気をつけてよね。」 「は、はい。気をつけます。」 紅葉さんの鋭い眼差しに、後藤さんは萎縮してしまう。 まるで、子犬のように小さく見える。 「あ、あの、私は別に大丈夫です。記憶を失っているから仕方がない事で、後藤さん気にしないでくださいね。」 「伊藤さん、ありがとうございます!」  にこりと微笑んだ私に後藤さんは感動をしている。 「……………これでも、だったのかねぇ。」 後藤さんの姿を見た櫂さんが呆れたように溜息をつく。 それを見た後藤さんが櫂さんへちらりと意味深に見つめていた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!