終焉

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 ある日の夜、突然目が覚めた。枕元にあるスマートフォンに手を伸ばす。時刻は午前三時を少し過ぎたくらいだった。  まだ寝られる、と思い瞼を閉じる。しかし、瞼の外側で何かが光ったように感じた。直後、轟音が鳴り響いた。雷だ。どうやらその音で起きてしまったらしい。  もう一度寝よう。そう思い布団にくるまるが、雷鳴はそれを突き破るほど激しい。雷雲はちょうど家の真上にいるようだ。そのため、どんどん感覚が研ぎ澄まされていく。  窓に液体が当たる音も聞こえてきた。外に出て空を見上げたわけではないが、かなりの悪天候に違いない。  ベッドの上で何度か寝返りをうつ。だが、身を囲む激しい音のせいで寝ようにも寝られない。それがなんとも煩わしい。  たまらず体を起こしてトイレに向かった。尿をたした後、再び寝床に戻った。少し時間をおけば、この原因の雲もどこかへ移動してくれるだろう。そう思ったのだ。  しかし、雷雨は一向に止みそうにない。むしろ、激しさが増しているように感じる。  すると、突如として体が大きく揺さぶられた。さらに人の悲鳴も聞こえてきた。  これはただ事ではない。一体、何が起きているのか。気になりベランダに出た。  すぐさま全身が液体でびしょ濡れになった。加えて、鼓膜を突き破るような爆音と、体を崩すような地ならしが発生した。その反射で耳を両手で押さえながら身を屈めた。  少し時間を置いた後、何とかして立ち上がり、目元を拭って外の世界を見た。  そこにあったものは、この世の地獄だった。  目を細めてしまうほどの眩い白色の大空。  体を突き抜けるような横殴りの大量の雨水。  ひび割れた大地から吹き出す煌々と輝くマグマ。  おそらく倒壊したであろう住宅の瓦礫の山。その中には真っ赤に染まった人間が挟まっている。  天変地異により六回目の大量絶滅が始まったのだ。 (完)
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