うえからしたまで

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 自分ひとりで、大人になれたつもりでいた。  ハタチもすぎて、大学も卒業して。  それで一人前になったつもりでいた。  が、それはあっけなく違う、と目の前の〝後輩〟に否定された。  クラクラするのは、慣れないアルコールをあおったせいだ。  ――だから。  だから違うんだって。  否定の言葉を述べたいのに、喉が固まって、口から上手く音声が出て来ない。熱いのは額と頬だけ。  消して、掴まれている両手首なんか、熱くなってない。 「いい加減、わかったほうがいいんじゃない?」  そう言って、仰向けに倒れた俺の上にまたがった〝後輩〟が、クスクスと笑っていた。
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