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◆
生きている意味はなんだろう、恐らくそれに答えられるものはいない。
いたとしてもそんなものは薄っぺらでつまらなくて、くだらないヘドがでるほどありふれた文字列だろう。
「ーーごめんーー」
事実を全て知った彼は一言、謝ってきた。
そんな謝罪など意味がないことは彼も自分自身もよく分かっている。
でも言わずにはいられなかったのだろう。
「君が謝ることじゃない」
京は静かに首をふった。彼に恨みなどない。
あるとしたら、僅かな羨望だけだったかもしれない。
今となってはそれも消え失せてしまったが。
「悪いのは全て父と…母だ」
「ーーそうだけど、でも…」
元気だけが取り柄の彼もさすがに元気がない。
自分も同じ立場だったらそうなるだろう。
いやーー他人など気遣ってる場合ですらなくなるだろう。
いつものメンバーもいない。今日は彼に話があるとそっと呼び出されたのだ。なので彼の家にお邪魔しているのは自分だけである。
ーー母は最低な人間だった。
いつまでも子供のような人でワガママが通らないと癇癪を起こすのは当たり前だったし、それでいて恋に恋するようなそんな女性だった。
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