十章 望まれた命と望まれなかった命

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だがそれでも母はきっと京のことを恨んでいるだろう。 『お前を生まなければ私は生きていられたのに…』 記憶にないはずの母の言葉は今もずっと京の胸に響いていた。 ☆ 記憶の中にある母はいつも優しかった。優しい言葉をたくさんかけてもらったことは今でも忘れない。 ただ母が自分たちを裏切っていたこともまた事実なのだろう。 父に帰ってから見せてもらった母の子供のときの写真とあの“ヒカリ”が似ていたことが全てだったのだろう。 ーー京の話を聞いたあと、光は母の墓参りに父と同行した。 「母さんを大好きか… 光は本当に強い子になったな」 父は帰り際、そう呟いた。 「オレ、強くなんかないよ」 光は父の言葉を軽く笑って否定した。 「これからも苦労かけると思うが、すまんな」 「うん」 たくさんの言葉を今は言うべきではないと思った。その時が来たら父に言えばいいと光は感じた。 ゲームで起きたことは秘密にして京と偶然出会い、話をしたことだけを光は伝えたのだった。
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