十章 望まれた命と望まれなかった命

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森脇はそう言うとちょいちょいと開いた扉の先に向かって手招きした。 「今日は転校生がいるの。ちょっと紹介するわね~」 入ってきた転校生のその姿に光は少なからず、驚くことになる。 「草薙 群馬(くさなぎ ぐんま)です。どうぞよろしく」 そう言ってニッコリと笑った彼はあの『ソウルフェイズ』の最期に自分達を導いてくれた“クサナギ”に瓜二つだったからである。 「…こんなことって…」 「どうした?光」 光の珍しい動揺に進が不思議そうに顔をしかめた。 光は動揺を隠せずに愛や命と思わず顔を見合わせる。 彼女たちはクサナギ自体が自分達を救ったとは認識してはいないが“防衛システム”としての彼のことは覚えていたようだ。 同じように驚きを隠せない顔をしていた。 「両親の都合で北海道から引っ越して来ました。草薙群馬君です。みんな仲良くしてあげてね~」 ざわざわとした微妙な空気のなか、群馬は涼しい顔で何事もなかったかのように席についた。 (た、他人のそら似だよね。さすがに) だって彼はゲームの中の人。それにあの時消えたはずーー 現実にいるはずのない人間なのだ。
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