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私の名前が出たのでびっくりした。
そしてどうして優も出てくるの?
直哉も驚いて…いや、違う。
言われるのをわかっていたように高志を見返している。
2人の視線に胸がザワつく。
私は困惑して由香を見た。
『雪乃、ごめん。
言わせてあげて。
聞いてあげて欲しい。
高志もそれなりの覚悟で言ってるから。
お酒の力を借りているけど。』
由香は慈しむように高志を見つめた。
『直哉、いつまで雪乃と曖昧なままでいるつもりだよ。』
直哉は黙っている。
『雪乃のこと拒絶したくせに、大学で雪乃にせまる男たちが出きたら慌てて取り返しにいったよな。』
告白したこと、由香から聞いたのか。
夫婦だもんね、仕方ない。
女子の数が少ない大学だったからまわりにいるのは自然と男の子ばかりになったけど、モテていたわけじゃない。
夏休み前のある日、講義が終わると校門で直哉が待っていた。
そこから今の距離がはじまった。
『もう大人だから、自分たちでなるようになるだろうと思ってたよ。
だけどずっと変わらないじゃないか。
いつまで雪乃を宙ぶらりんにしとくんだよ。
雪乃が答え出すの待ってるのかよ。
来年の転勤で離れるつもりかよ。』
直哉はとうとう高志から視線を外して下を向いた。
『直哉、もう優のこと気にするのやめろよ。
優もあの頃雪乃が好きだった。
でももう優は雪乃を幸せにすることは出来ないだろ。
それに…』
高志は下を向いて鼻をグズっとさせた。
『2人が幸せなったって、優は恨んだりしねぇよ。
優は…優はそんな嫌な奴じゃねえよ…。』
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