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『冷えてきたよね。 あったまろ。』 直哉が言いかけた答えを聞きたいけど聞きたくなくて、2人が戻ってきたことにホッとしてしまった。 『さっきは言い過ぎた。 悪かったな。』 高志が直哉にグラスを渡しながら謝った。 直哉は『全然』と言って首を振った。 『もうすぐ天王星が月から出てくるね。』 携帯のアラームを合図に望遠鏡のところに行く。 月は左側から半分が光を取り戻してきている。 またいつもの日常に戻るんだ。 21時22分、望遠鏡を覗いていた高志が叫んだ。 『優!優だ!天王星に優がいる!』 えっ?とみんなで高志を見た。 写真を撮っていた由香がかなり酔って夢を見ているような夫を労るように近づいた。 『ほんと?』 微笑みながら覗いた由香が『あっ!』っと声をあげた。 『雪乃…!』 半べそになりながら私を呼ぶ。 どういうことかわからずに、とりあえず覗いた。 優だ。 星に対する大きさとか、色々おかしいところはあるけど、確かに優だ。 高校の制服を着た優が天王星に座って手を振っている。 ニコニコ笑いながら。 そして両腕を上げて、大きく○を作った。 涙が溢れてしまう。 『直哉…。』 直哉が望遠鏡を覗いた。 『っ…!』 絶句してしばらくたった後、しゃがみ込んで頭を抱えた。 高志が由香の肩を抱いて、空に向かって手を振って叫んでいる。 『優!優!元気か? 俺たちは元気だよ! 背中を押しに来てくれたんだろ? 会いにきてくれてありがとな!』 空を見上げるけど涙で霞んでぼやけてしまう。 だけど私も優がいる方へ手を振った。 しゃがみ込んでいた直哉が立ち上がって、私の手を取った。 頬が涙で濡れている。 『雪乃、ごめん。 本当にごめん。 雪乃が好きだよ、あの頃からずっと。 これからもずっと一緒にいてほしい。』 ずっと聞きたかった気持ち。 ずっと聞きたかった言葉。 優、大きな○をありがとう。 頷いた私は初めて直哉に抱き締められた。
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