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私達5人は高校の天体観測部の同級生だった。 部活の日は一度家に帰ってから学校に集まり、屋上に上がってみんなで観測した。 部費で購入した1台と菅原先生の私物の2台。 3台の望遠鏡を交替に覗く。 夜空に広がる浪漫と菅原先生の広い知識に私達は夢中になっていた。 もう高校生といえどもやはり夜に集まる活動に、たまに学校からも保護者からも反対の声が上がったが、菅原先生の人柄で跳ね返してくれていた。 年に2回、保護者も招いて観測会を開催し、保護者の理解と信頼を得ていた。 活動の集合は夕方だったから各自で集まり、夜の解散は先生が率いて集団でバス組のバスを待ち、その後電車組の駅まで送ってくれた。 安全確保の為、自転車での再登校は禁じていた。 だから、あの日の優の自転車登校はたまたまだった。 私達の高校生活最後の部活の日、塾で質問していて遅くなった優は約束を破って塾からそのまま自転車で学校に向かった。 その途中で交通事故に遭い、星になった。 優のご家族は、約束を破った優が悪いし車で送ってやれなかった自分たちが悪いとし、菅原先生と部活には責任を負わせないように学校にお願いしていた。 それでもやはり、菅原先生は部活を閉めた。 私はあれから夜空を見上げることはあっても、観測まではしなくなった。 望遠鏡を買おうと貯めたお小遣いはそのまま手つかずに残っている。 今日、久しぶり天体望遠鏡を覗く。
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