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『優はどんな仕事やってたかなぁ。』 高志が楽しそうに言う。 『のめり込むと集中力が凄かったからなぁ。 なんかの研究者にでもなってたかな。』 直哉が答える。 『星の観測も熱心だったからね。 今頃新しい星とか発見してたかもね。』 私が言うと、由香が『そうだね。』と微笑んで頷いた。 今まで何となくみんな優の話は避けてきた。 楽しい出来事ではない。 思い出話をするにはまだ若すぎた。 しかし久しぶりに天体観測を目的に集まった今日はあえて話題にしようという高志の気概が見える。 どうしたんだろう。 悪いことでは無いけれど。 優はどんな大人になっていたんだろうね。 いつでも穏やかで優しかったよね。 ボンヤリ考えれながら空を見上げると、月が欠けてきているのが見えた。 『欠けてきてるよ! 高志、望遠鏡貸してね!』 携帯を見ると時刻は18時26分。 私は慌ててコタツから飛び出た。 望遠鏡から見る月はクレーターまでくっきりと見えて、あそこは宇宙なんだと再認識する。 その宇宙は手を伸ばせば届きそうで、天体観測はその感覚が楽しかったんだ。 『雪乃(ゆきの)、俺にも見せてよ。』 直哉が私の上着を持ってきて肩にかけてくれながら言った。 さりげない優しさにいつもより胸が痛む。 この優しい人はどうして私の恋人じゃないんだろう。 かわりばんこで望遠鏡を覗く。 真剣な眼差し。 話しながら星を指さし近づく顔。 泣きそうになる懐かしい感覚。 高校時代、私は星空の下で直哉に恋をした。
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