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由香に肩を抱かれて自分が泣いていることがわかった。
『優が…。
私、知らなかったよ…。』
それだけ言うのがやっとだった。
『うんうん。
雪乃はずっと直哉しか見てなかったもんね。
それでいいんだよ、大丈夫。
私も高志に聞くまで気が付かなかったし。』
直哉がやっと話し出した。
『わかってるよ。
俺もわかってるんだ。
だけど…優が亡くなる前の日、受験が終わったら告白するんだって言ってた顔が忘れられない。
俺もって言えなかったズルい自分も忘れられないんだよ。』
『今、雪乃に対してやってることの方がズルいぞ。』
『…ああ。』
違う、直哉のせいじゃない。
もし優に言われたとしても断ったいた。
私はどんなカタチでも隣にいたかった。
そして直哉も私を好きでいてくれたの?
由香の携帯のアラームが鳴った。
あと10分で天王星の惑星食がはじまる合図だ。
『もうすぐ惑星食か。』
高志がこちらへやってきて、黙って私の肩を叩いた。
口出しして悪かったな、というような顔だ。
ずっと心配してくれてたんだね。
ありがとう。
高志はいつまでたっても部長だな。
私は涙を拭いて頷いた。
『さあ見ようか。』
由香に望遠鏡の方へ連れて行かれた。
直哉はコタツに入ったまま、下を向いていた。
何を考えているんだろう。
そっとしておくしかなかった。
肉眼でも見える明るい星が月に向かって進んで行く。
動いていないように見えて、やはり天王星もかなりの早さで動いている。
あっという間に月の陰に隠れてしまった。
宇宙の神秘に圧倒される。
直哉にも見せたかった。
『次はまた40分後だね。
温かいコーヒーでも淹れようか。』
由香と高志がキッチンに下りて行った。
『ありがとう。』
2人が見えなくなってから私はコタツに入った。
直哉は真っ赤になった目で私の方を向いた。
『雪乃、俺…。』
『うん。』
『高校の時から雪乃が好きだったよ。
だけど、雪乃から言われた時、どうしたらいいかわからなくて。』
『うん。』
『離れようと思ったんだ。
それで優と同じだと思って。
だけど大学で雪乃が新しい男たちに囲まれているのを見て…他の誰かのものになるのは嫌ったんだ。』
『うん。』
『雪乃が嫌になれば離れるだろうって、雪乃まかせにしたんだ。』
『うん。』
『ごめん…。』
『…直哉。
私はあの頃からずっと直哉が好きだよ。
だから離れなかった。
直哉だけのせいじゃない。』
泣かないで言いたい。
グッとこらえた。
『今、直哉は私のことどう思ってるの?』
『俺は…。』
言いかけたところで、由香と高志がホットワインとコーヒーを持ってきてくれた。
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