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授業中こんなことあったとか、新しいお店がどこそこに建ってたとか、璃虎の話にあいづちを打ちながら、帰り道を歩く。ねぇ、もっとゆっくり歩いてよ。
まだ帰りたくないの。
まだ隣にいたいの。
「璃虎はどうなの?」
「なにが?」
「好きな人との進展」
何度も何個も浮かんでくる「まだ」は口にできないのに、聞きたくないことは簡単に口に出せてしまう。口を両手で塞いでも、もう璃虎の耳には届いてしまっている。
聞きたくないのに、つい聞いてしまうのは、本当に私バカなんだと思う。バカすぎて、吐き気がする。知りたくないくせに、知りたい。
「ぼちぼち、かなぁ」
「なによ、ぼちぼちって」
「こころこそ、いい加減好きな人の話教えろよ」
瞬間、腕を掴まれて抱き寄せられるから、心臓がおかしな鼓動を鳴らす。後ろを自転車が、チャリンチャリンと軽快な音を出しながら、通り過ぎていった。
「あっぶね」
ほら、また一つハートがこぼれ落ちてしまった。自然にそんなことをするから。私はどんどん、璃虎を好きになっていく。
いつもは誤魔化してるのに、また好きが溢れたから、ガラス瓶に詰めるハートの代わりに言葉にする。
「好きになった理由はね」
「初めて聞くんだけど」
「優しい声だったの」
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