17人が本棚に入れています
本棚に追加
やんちゃそうなクラスメイト。最初の璃虎の印象はそれだけだったのに。やんちゃそうなくせに、放送委員だし。放送してる時の声がやけに綺麗で、とても優しかった。
そのせいで私は恋に落とされてしまった。お昼の放送が楽しみで、ご飯も喉を通らなくなったの。
「それだけ?」
「まだあるよ」
二回目に恋に落ちたのは、隣の席になった時。
「私を見つけてくれたの」
「は?」
璃虎はきっとわからない。それでも、私にとってはとても大きい一つの出来事だったの。
自分に自信がなくて、誰にも見つけてもらえない弱虫だった。今だって自信があるか、と言われればきっとこれは自信じゃない。慣れてきてうまく生きてるだけ。
「見つけてくれたってどういうことだよ」
「好きなことがあって、それを一人でしてたの。でも、誰にも評価されなくて、見つけてもらえなくて、それが辛くて、やめようと思って」
誰かに見てほしい。認められたい。そんな思いが萎れるには十分な期間、私は誰にも見つけてもらえなかった。
それなのに、そんな私のイラストを見て、璃虎が「可愛いな、あ、勝手に見てごめん」なんてぼそっと呟いたの。
私、それだけで、璃虎のこともっと気になって、もっと好きになっちゃったの。
「心がもう限界の時に、たった一言褒めてくれたの。それだけ」
本人を前にそんな話をするのは、恥ずかしいどころの話じゃなくて。心臓がバクバクしすぎて、息が止まりそうだった。
「いつの話だよ」
「秘密」
「俺も知ってる人ってこと?」
「知ってるね」
家がどんどん近づいてくるから、この時間を延長したくてわざとゆっくり歩く。気づいてるのか、気づいていないのか、璃虎もゆっくりになった。
かと思えば、急に方向を変える。
最初のコメントを投稿しよう!