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「いいの?」
「いつものお礼」
「何もしてないけど」
「いつも褒めてくれんじゃん、いろいろ」
焼き芋を受け取れば、璃虎はぷいっと頬を背けて、私の目を見ない。珍しい璃虎の行動に、また、想いが一つコロンっと音を立てて転がった。コロン……?
「あー!」
しっかりカバンにしまったはずのガラスの瓶が、足元に転がっている。割れてはいないけど、ヒビが入っているし、閉まっていなかった蓋からハートがこぼれ落ちていた。
ガラス瓶を持ち上げれば、璃虎が隣にしゃがみこんで焼き芋を持ってる手と反対の手で、ハートを摘み上げる。大切に、割れ物みたいに、優しく。
「これ一個くれない?」
「へ?」
「いや、できれば全部」
「何急に」
璃虎の突然の言葉に、意味がわからない。ハートをあげるのは全然、いい。だって、そもそも璃虎への想いを私が具現化したものだから。
「分かりやすすぎって言ってんの」
璃虎の言葉に、まさか、と、嘘でしょ、が脳内を過ぎる。それ以来何も言わずに璃虎が焼き芋を頬張るから。私もガラス瓶をカバンに押し込んで、焼き芋を頬張る。
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