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三時。まだ授業が終わったばかりで騒がしい教室を後にする。私には秘密の場所があるのだ。特別棟二階。選択授業の教室が並ぶ一番端。放課後になると、人も居なくなる廊下に私の秘密の場所はある。図書室だ。私は、静かに最終下校時刻までここで本を読み耽るのが好きだ。誰にも干渉されない、私だけの時間。階段を登って勢いよくドアを開ける。誰かが振り向いた。先客がいたとは。
「そんなに慌ててどうしたの」
とその人は笑った。今日、図書委員会の集まりなんてあっただろうか。そう考えていると声がしたものだから驚いて後退りをしてしまった。目が合った。
相手は不思議そうな顔をしていた。よく見ると整った顔をしている。本を持っている手は華奢で、黒い髪の毛はとても丁寧にとかされているように見える。
「荻野夏葉さんだよね?」
突然名前を呼ばれて彼をみていた私は、一気に現実にひきもどされたような感覚になる。
「…はい」
なぜか緊張してしまった。彼はそれには構わず
「よかった〜違っていたらどうしようかと思ったよ」
と笑った。
「あの、どうしてここに?」
気になっていたことを聞いてみた。図書室はい毎日放課後開放されているが、いつも来るのは私一人だけだ。先客があるのは今日が初めてだった。
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