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「いつも来ているよ。でもまあ昼休みに来てるから荻野さんと会うことはないんだけどさ。でも今日はちょっと気になることがあってね。荻野さんにも、協力して欲しいんだけどいいかな」
「気になること?」
「うん」
「司書さんに聞いた話なんだけど、この図書室にはある本があって、その本は卒業生が書いた本らしいんだけど、卒業してからその人は失踪しちゃったんだって。それからというもの、その人が失踪した日、失踪した時間に、その本に何か変化があるらしい。それを突き止めてくれって言われてさ。協力してくれる?」
「あなたの名前は?」
「忘れてた。君の名前は知ってるのに、僕の名前を知らないのは不便だよね。僕、榊優弥っていうんだ。よろしく」
なかなか不思議な人だ。彼は相変わらず笑っていた。
「本の話、協力するよ」
そういうと彼の顔がぱっと明るくなった。
「よかった。正直、一人は心細かったんだよね。あー君のことはね、友達から聞いたんだよ。いつも放課後にすぐどこかに行っちゃう子がいるってね」
私が聞きたかったことが言わなくてもわかったのだろうか。
「あなた何組?」
クラスが近いなら何かで一緒になったことがあるかもしれない。
「三組だよ」
「じゃあ選択授業とかで一緒になったことはないね」
「そうだね。廊下で見かけたことはあったけどね」
「そうなんだ」
くだらない話も面白いと思った。
「本に現れる変化って何?」
「それは、詳しくはわからないんだって。でも絶対変わるんだってさ。面倒くさいよね。はっきりしてって」
そう言って彼は笑った。
「このことを知ってるのって司書さんと私たちだけ?」
「そうみたい」
「本に変化が現れるのっていつなの?」
「今週の金曜日だってさ。九月十八日の午後五時だって」
思ったより話し込んでいたようだ。ふと、時計を見ると最終下校の十五分前だった。
「そろそろ帰る?明日も放課後ここに集まろう。作戦会議しなきゃ」
「そうだね。また明日」
窓から夕陽の光が差し込んでいた。
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