四、

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四、

狐が術を施して三日目の夜がきました。 丸二日何も食べていない狐の体はふらふらで、遠い男の家まで歩くのは大変なことでした。 それでも今夜には口づけができるかもしれないと思うと嬉しくて足は軽くなりました。 人間になったらあの男とずっと一緒に居られる。 あの時のように暖かい手で抱きしめて一緒に眠ってくれるだろうか。 そう思うと空腹も忘れて、娘の姿になった狐は前を向いてせっせと歩いて行くのでした。 男の家に着き戸を叩くと、やはり何も訊かれず戸はガラリと開きました。 男の顔を見ると娘は長い道のりの疲れも忘れて嬉しくなって自然に笑顔になっていました。 男は眠そうな顔をしていました。 狐は巣穴へ帰ったら寝られますが、男は明るいうちは畑仕事をしたり、仕掛けた罠を見に行ったりと寝る暇がありませんでした。 「なんだか眠そうですね。」 と娘が言うと 「誰かのせいでな。」 と男は短く答え大きなあくびをしました。 「私はもう一人でも笠を作れますからどうぞ寝てください。」 娘にそう言われて「うむ」と答えながら男はそれが狙いかなと思いました。 俺が寝ている間に何か悪さをする気かな。 それなら余計に寝られないじゃないか。 でも、男はそれでもいいと思い始めていました。 娘といることは男にとって楽しい時間になっていました。 「今夜は芋を蒸しておいた。食べるか。」 男は娘に聞きました。 すると娘は涎を垂らして物欲しそうにしながらもまた首を横に振りました。 娘は少し痩せたように見えました。それなのに何故食べないのか、男にはわかりませんでした。
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