三、

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娘はその夜も必死になって笠を編みました。 男もその横で縄を綯って過ごしました。 男はふと「お前がもし狐か何かなら木の葉を笠に変えたりできるのだろうな。」と言いました。 すると娘は驚いたように顔を上げ「それでも良いのですか。」と聞きました。 「良いわけがなかろう。それにお前は狐ではないだろう。」 男が言うのを聞いて娘はがっかりしました。 「そうです。私は人間でございますから。」 そしてまた口を尖らせて笠を編み始めました。 その様子は可愛らしくて男は笑いそうになるのを堪えました。 しかし男はいよいよわからなくなりました。 こいつは本当に俺を騙そうとしているのか。 それともこういうところもこいつの騙しの一つなのか。 そうして男に答えの出ないまま、夜明けが近づき、その夜娘は、どうにか二つの笠を編むことができました。 「昨日のと合わせて三つです。」 そう言って躊躇いながら男の顔を見て言いました。 「やっぱり十無いといけませんか。」 その表情に、男は「もう騙されてやろうかな」と思いながらも「いや駄目だ」と思い直し 「当然だ。あと七つ足りないからな。」 と言いました。 娘は大きな溜息をつきました。 「口づけがこんなにも難しいとは思いませんでした。」 そう言って、また山奥の方へと帰っていきました。 その後ろ姿はふらふらと覚束なくて男を心配させました。
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