騙りのキャロル

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「…………」  深夜、午前二時。  私は周囲の気配を伺った。どうやら家族はみんな眠ってくれたようだ。  ふう、とため息をひとつついて、目の前の檻の鍵を見つめる。ふわり、と錠が持ち上がり、かちゃん、と音を立てて外れた。我々のサイキックを用いれば、この程度の鍵を解除するなど訳ないことなのだ。 ――賢一郎もその父親も熟睡しているようだ。……よし。  ふわふわの頭でくい、とケージの扉を押し開けて外へ出る。リビングの窓から、美しい夜空が見えた。月からほど近い場所に、人間の肉眼では見えないほど小さく暗い、赤い点が見える。  無事、準備は整ったようだ。  赤い点――否、我々の宇宙船に向けて、私はメッセージの送信を開始した。 『こちら、偵察員S-563。無事、日本の現総理大臣一家を魅了し、潜入することに成功した。このまま情報収集を続ける。まずは、高い科学力を持ちながら宇宙的脅威にあまりにも脆弱なこの国を狙うのがベストだろう。皆も定時連絡を怠るな。……我らの悲願、バグワン星人の地球移住計画を、なんとしても成功させるのだ。オーバー』
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