77人が本棚に入れています
本棚に追加
朝一の飛行機で出発して3時間のフライトだった。
到着したのはお昼前、照りつける太陽が肌を焼き眩しい光に目を細めた。
空港近くのレストランでランチを食べた後、車3台に分乗して教会へ向かう。
窓の外は青空が広がり、街路樹はいかにも南国らしい椰子の木が並んでいる。
前回は気が付かなかったけど、教会は小高い丘の上にあった、海に突き出した丘には教会だけが建っている。
細い坂道を登り、少し広い教会の前で停車した。
そこから歩いて教会へ向かう、ドアの前で全員揃うのを待って、ドアを開けた。
懐かしい顔の牧師と司祭が笑顔で待っていた。
挨拶をして祭壇の裏の控え室で着替える。
この前と違うのは、俺も亜蓮も黒のスリーピース、京輔も遼太郎さんも同じスリーピースに着替えた。
莉空さんは白のタキシード未住帆さんは黒のタキシードに着替えた。
胸に飾るブートニアは白い胡蝶蘭、豪華で可憐な白い花が二人を祝福しているようだ。
俺たち四人の胸には色違いの薔薇、赤と黄色とピンクとオレンジ。
胸元から薔薇のいい香りがした。
教会の外へ出て、椅子に座って二人の入場を待った。
祭壇で待つ司祭の前に二人が並んで立った、僕たち四人もそれぞれ司祭の横に並んで、二人を見守る。
司祭の言葉で指輪の交換をした後、誓いの口づけをした。
莉空さんの目から涙が溢れて零れ落ちた。
未住帆さんがその涙を白い手袋をした指で拭き取った。
優しく見つめる未住帆さんと莉空さんの視線が絡まる。
海の向こうに沈む太陽が周りをオレンジ色に染め、俺たちの顔も幸せの色に染まった。
丸い大きなテーブルを囲んで、シャンパンで乾杯をした。
豪華な食事も用意され、飲みながら食べながらおしゃべりと美味しい食事と酒に酔う。
すっかり陽が沈むとキラキラとしたイルミネーションが教会を飾る。
少し冷たい夜風が肌に心地よく、ほてった頬を撫でる。
ホテルへ戻ったのは夜もだいぶ更けていた。
京輔と二人部屋に入る、興奮と酔いでふわふわと気持ちが浮いていた。
「京輔、俺こんなに幸せで怖い」
急に胸がいっぱいになって、瞼に熱がこもり瞬きすると涙がこぼれ落ちた。
幸せなのに少しだけ不安な気持ちになる。
「碧、なにも怖いことはないだろ?不安な事も寂しい事もない。何があってもいつもお前のそばには私がいる。私じゃ、頼りないか?」
「京輔だけいればいい、京輔がそばに居て欲しい」
「これからはずっと二人一緒だ」
「うん、莉空さんや未住帆さんも幸せそうだったね。俺達の結婚式も感動的だったけど今日の式も感動した」
「毎年やるか?」
「やる」
「・・・・・冗談だろ、勘弁してくれ」
大きなバスタブにたっぷりの湯を張って、二人で浸かる。
身体から力が抜け、京輔の身体に寄りかかると心地良い眠りに誘われた。
目を閉じると、いい香りと温かな京輔の体の温もりが伝わってきた。
後ろから京輔が両手を回して抱きしめた。
京輔の胸に背中を預け、大きな腕で包まれる。
母親に抱かれたらこんな安心感なのだろうか?
不安だった子供の頃にこんなふうに抱いて欲しかった。
でも、それは叶わない。
その代わり京輔が居る、俺の全部を包み込み護ってくれる京輔が居れば何も怖くない。
俺のそばに居て俺を守る京輔、そして京輔を護り包み込む俺、大きな包容力を身につけて俺はこれから先何があっても京輔を守ると決めた。
護られるだけではなく、俺も愛する人を守る。
一晩中一人で海を見た夜、すぐ近くで俺を見ていた京輔・・・・・あの時から、俺と京輔はこうなる運命だった。
人と人の巡り合いは奇跡に近いと思う。
様々な事件や出来事が積み重なって、出会った二人はきっとこの先何があっても別れることはない。
俺も京輔も遼太郎さんも亜蓮もそんな巡り合わせがあったから、出会った。
この出会いを大切にして生きていきたいと思った。
心地良い酔いと京輔に抱かれて、熱い夜は静かに更けていった。
完
最初のコメントを投稿しよう!