大将軍

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将軍はその日の瓦版を読んで、上機嫌だった。 なぜならば彼の事が『天下の大将軍』と書かれていたから。 これを記した者には褒美として何両か与えるか、そのセンスを称えて掛け軸か壺でも(さず)けるか。 小躍(こおど)りする。 あやうく日本で初めてスキップをした将軍、と後世で言われる所であった。 日頃から自分の事を小ばかにする正妻に、自慢げに瓦版を見せに行く。 さらりと文に目をとおした妻は 「あなた若い側室に入れあげ過ぎて、ぼけ始めたんじゃない? よく読みなさいよ」 といって将軍につき返した。 男は冷静に瓦版を読み返す。なんとそこには、大将軍ではなくと書いてあった。 しかし、さすがは天下の大将軍。器が大きい。 これに動揺せず破顔一笑。持っていた扇子で膝をたたき 「一本取られた! ワシが犬のような将軍ってか。面白い~ウケる~」 と言う──ことはなかった。 犬将軍は顔を真っ赤にして家臣を呼ぶ。 「記者を捕まえて、尻を犬に噛ませよ! 少なくとも3ガブリじゃ」 と命じた。
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