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ずれ
「何だ、二日間、ずれてるってわけか?」
「ええ、そのようですね」
言ったけど、何、この電話?嘘でしょと思ってた。
(一部の地域だけ時間がずれているのだろうか。それともこの電話だけ?)
私は汗を感じながら、周りを見回した。おかしくない。いつもの日常だ。
(おそらくこの電話だけずれている)
でないと、もし、この男性の地域ごとずれていたら、もっとニュースになったり、SNSが騒いだり、大事になってるはず。
「君は何者?本当に、コールセンターなのか?」
「ええ、それは本当ですよ」
男が嘘を言っている?いや、この緊迫感はただ事じゃない。
「つまり、あなたがいるのは二日前の世界。こちらは未来です」
私は小声で、電話の主に言った。他に声が漏れないように。
「何だって?こちらが二日、遅れているのか」
「ええ、そのようです」
「俺に嘘を言ったって駄目だぞ。持てるものは少ないんだからな」
「私だって、あなたを騙して得にはなりません」
「君の側が未来?本当なのか?」
「はい、そうです」
電話の声の主も、私の声も何か現実感がない。奇妙な響きで広がる。
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