300人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
プロローグ
「雪ちゃん、昨日、誕生日だったんすね。」
「うん。」
「誕生日おめでとうございます。」
「ありがと。」
「真夏生まれなのに雪絵って、何か曰くありそうっすけど。」
「特にないよ。私が産まれた日が、ものすごく暑い日だったから、少しでも涼しく感じるようにっていう母の独断と偏見で決まっただけだもん。」
「えっ? マジで?」
「マジ。」
「お父さん、反対しなかったんですか?」
「したらしいけど、そんなの聞くような人じゃないし。」
「まあ、雪絵って、綺麗な名前には変わりないっすよね。俺、好きですよ。」
「へっ? そ、そう。ありがと。」
村上雪絵は9班のセールスドライバーの尾崎進太郎に自分の名前を褒められて恥ずかしくなった。自分の名前は嫌いじゃないが、少し古臭いと思っている。
照れ隠しに早く話を切り上げようと、PCのスクリーンに顔を向け仕事に集中することにした。
「そうだ。今度、俺んちに、飯食いに来ませんか? 誕生日祝いしますよ。」
「行くわけないでしょ。」
続けて進太郎から食事に誘われた雪絵は、PCのスクリーンの向こう側の進太郎に顔も向けずに答える。
最初のコメントを投稿しよう!