策に落ちる

Ｃ夫の場合

Ｃ夫
会社員１０年目　３４歳
既婚者

***

　先日、Ｂ子さんと弟の離婚がようやく成立した。
　弟は外面はいいのだが所謂ろくでなし。
　Ｂ子さんは結婚して以降、度重なる弟の浮気に悩まされることになった。

　せっかく警告を送ったのに通じなかったことが残念だ。
　賢い女性のはずなのだが、恋愛に関してはそうではなかったらしい。恋は盲目という奴だろう。

　当時、弟は二人の女性を天秤にかけていた。
　正確には何人も付き合っていた女性の中から、同じ会社で役職持ちになっていたＢ子さんの稼ぎをあてにして彼女に寄生することを考えていたのだが、僕の名刺フォルダからＡ子さんという社長令嬢を見つけ、僕のふりをして彼女に乗り換えようとしていたのだ。

　Ａ子さんの御父上の会社とは取引があり、関係を途絶させるわけにはいかなかった。

　そこで弟がＡ子さんにプロポーズを仕掛けるであろうレストランに妻と乗り込み、弟が手配していた花束を受け取るために離席した隙に、弟とＢ子さんがラブホテルから出てくる写真を彼女に共有した。
　Ａ子さんはその写真を信じてくれて、弟とその場で縁を切ってくれた。

　翌週、本命のＡ子さんに振られた弟は、Ａ子さんに渡すはずだった指輪を持って性懲りもなくＢ子さんにプロポーズした。
同じ方法でＢ子さんにも弟の所業を知らせようとしたのだが、弟はＢ子さんには花も用意せず、席を外れる機会がなかったため、仕方なく僕が電話をして席を外させ、その隙に妻にＡ子さんとのデートの写真を送ってもらった。
　しかしＢ子さんには信じてもらえず、婚約が成立してしまった。

　家族の顔合わせでも、実際に兄である僕がいたせいでＢ子さんは弟を完全に信じてしまった。
　それとなく警告したのだが、彼女には無駄だった。
　仮に僕が弟の所業をはっきり言ったとしても、当時の彼女には信じてもらえなかっただろう。

　しかしＢ子さんは、本来自立した立派な女性だ。
　弟の本性を知った今、傷はついたがその分しっかりと制裁を与えるに違いない。先輩にあたる弟よりはるかに仕事のできる人だ。今後ひどい目に合うのは弟だろう。
　両親もこの件でついに弟を見限った。

　Ｂ子さんには早く立ち直って欲しいと思う。

　なお、Ａ子さんは最近、僕の後輩と結婚が決まり、彼はＡ子さんの父の会社に入るため、皆に祝福されて退職していった。