アタシのママ

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【番外編】 ある夜、アタシは見てしまった。 あの女の素顔を……。 「うええええん!!」 大きな声で泣き喚く彼女は、ワインを片手に嘆き悲しんでいた。 「おぉ、どうしたのだ?サラ……」 お父様が彼女に声を掛けると、彼女は涙を流しながら訴えていた。 「クリスティーヌちゃんがぁぁ、ワタシに懐いてくれないのぉぉぉ〜〜!!ワタシはクリスティーヌちゃんがダイスキなのにいいい!!」 大きく口を開けてワンワンと泣く彼女に呆然とする。 えっ、ナニアレ。 お父様は彼女の頭を撫でながら、泣き喚く彼女を宥めていた。 嘘でしょ……? だってアンタ、いつも鉄仮面じゃないの。 鋭い目付きでヒトを睨んで説教する口煩いメイド長みたいな感じじゃないの。 そんな子供みたいに泣きじゃくるって……。 思わずその部屋に飛び込んだ。 「ち、ちょっと……!!」 声を上げたら二人で此方に振り返り、お父様がアタシの名を呼ぶ。 「クリスティーヌ?」 すると、彼女はピタっと泣き止んだ。 そしてソロリと此方を見つめると、彼女は勢いよくアタシの処へ駆けて来た。 「クリスティーヌちゃあああん!!」「きゃあああああ!!」 いきなり抱き着いてきた彼女に悲鳴を上げると、彼女はアタシにスリスリと頬を擦りつけてきた。 「うええええ〜〜んクリスティーヌちゃあん!!お継母【かあ】さんの事嫌いぃ?イヤぁ?」「ちょっと…!うわ、お酒臭い!!」「ワタシはあぁぁクリスティーヌちゃんのことがあぁダイスキなのにぃぃ〜〜〜!!」「ああ、もう!ふっつかないで下さい!!」「クリスティーヌちゃ〜〜ん!!」 悪酔いしている彼女に困惑していると、お父様がアタシに助言する。 「すまないねぇ、クリスティーヌ」「お父様……」「サラはお前の事が大好きなんだ。普段お前に避けられてるぶん、お酒を呑むと忽ちこうなってしまうんだよ……」 今だにアタシからふっついて離れない彼女を見つめ、小さく溜息を零す。 「はぁ……仕方ありませんわね」 アタシは彼女を引き剥がし、彼女の名を呼ぶ。 「サラ!」「クリスティーヌちゃん…?」 不思議そうな顔をする彼女にアタシは渋々、ホントに仕方なーく告げた。 「今日だけですわよ……お、お、おかぁ……さま……」 彼女はポカンとアタシを見つめていたが、次第に顔がニヤけてまたアタシに抱きついた。 「クリスティーヌちゃあああん〜〜〜!!」「だから抱きつくのヤメて頂戴!!」「可愛いい!可愛いい!アタシのクリスティーヌちゃん!!チュー!!」「あーもうっ、キスをしないで!お父様助けて!!」「ハハハッ」 アタシの頬にチュッチュッとキスをする彼女を抑えつつ、側で笑うお父様に助けを求めた。 次の日。 廊下で彼女とすれ違うと、彼女はいつもの顔でアタシに声を掛けてきた。 「おはよう御座います。クリスティーヌ」「……」 まるで昨日の人とは別人みたいに平然としている。 彼女は白けるアタシの視線に首を傾げつつ、二日酔いなのか頭に手を当てていた。 あんだけベロベロになってたら、そりゃそうなるでしょうに……。 アタシは少しからかってやろうと、ボソリと呟いた。 「あまりお酒は飲み過ぎ無い事ね……おかあさま?」 鼻で笑ってすれ違うアタシは知らない。 彼女が顔を赤らめながらも、満面の笑みを浮かべていた事を。 終
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