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暫くしてお父様がお帰りになられると、すぐにあの女を追い出すように頼んだ。
「お父様!どうにかしてあの人を追い出してっ!!」「クリスティーヌ、落ち着くんだ」「あの人が嫌なの!お願い!!」「大丈夫だよ、クリスティーヌ」「お父様……?」
お父様は話を聞くどころかアタシを宥めた。
「お前はまだ気持ちの整理がついていないんだよ」「え?」「サラが言っていたのだ。母親を亡くした子供は慣れるのに時間が掛かると……」「いえ…あの、お父様?」「だけど心の何処かでは望んでいるのだ。母親という存在を」
どうやらお父様は、あの女に言いくるめられてしまったらしい……。
「だからお前たちは暫くの間、一緒に生活してみると良い」
そう言ってお父様は話を聞く耳を持たなかった。
あの女ぁぁぁぁッッ!!!!
アタシは更なる恨みをあの女に募らせる。
それから、あの女に嫌がらせをしようと思いたった。
追い出せないのなら、あの女から出ていく様に仕組めば良いのよ!!
わざと足を引っ掛けて転ばせたり、花瓶に入った水を吹っ掛けたり、二階から物を落としてみたり、彼女の食べ物に虫を入れてみたり、洋服を裂いてやったりと、ありとあらゆる手段を使った。
しかし、彼女はアタシに注意するだけでこの屋敷を出て行こうとしなかった。
なんで?
どうして?
募る苛立ちに、アタシはとうとう最後の手段に出た。
「あの、サラさん…ちょっと良いかしら」「クリスティーヌさん?」
アタシは彼女を庭にある池まで呼び出した。
「アタシ、実は寂しかったの……」「クリスティーヌさん」「良ろしければ一緒に遊んで下さらないかしら?」
そう上目遣いで告げると、彼女は一瞬だけ目を見開いき、それからすぐに承諾した。
「え、えぇ…よろしいですよ!」「ほんと?やったー!!」「では、何をして遊びましょうか?」「そうねぇー、じゃあ“かくれんぼ”なんてどうかしら!」「かくれんぼ…ですか?」「亡きお母様がよく一緒にやって下さってたの!」「そうですか…分かりました」「じゃあ、サラさんがオニね?十まで数えてからアタシを探してくださいな!」
そう言って彼女に目を瞑らせて数を数えさせた。
「いち…にぃ…さん…」
彼女が数えている間、アタシは彼女の前で準備する。
「ろく…しち…はち……」
手をそっと前に出し、彼女が数字を言い切った時だ。
「きゅう……じゅう!」
彼女が目を開いた寸前、トン、と彼女の胸元を押す。
「もういい─────えっ?」
押された彼女は目を見開きながら、池にドボンと落ちた。
びしょ濡れになった彼女を見下ろし、アタシは笑う。
「あ〜ら、ごめんなさーい?手が滑ってしまいましたわ!」「……」
無言でアタシを見つめた彼女は、ポカンと間抜けな顔をしていた。
それがまた可笑しくって!
「サラったら、無様ねぇ〜?」「え…」「アタシが本気で貴女と遊ぶとでも思っていたの?」
高笑いしながら彼女を見下すと、彼女は俯き無言のまま池に浸かっていた。
「これに懲りたら二度とアタシの前に姿を現さないで頂戴!!」
そう言って彼女を置き去りに立ち去った。
ふふっ良い気味だわ!
流石に此処までされたらあの女だって出ていくでしょ。
アタシは勝利を確信した。
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