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無様
粕谷スカヤこと岳渕雄介は、歌舞伎町のバーでヘラヘラ笑い、薄っぺらな会話をダラダラ交わしながら仲間と飲んでいた。
「スカヤ、あのJKはどうした?」
「捨てた」
「へえー! 結構お前にご執心だったのに。じゃあ、俺が拾うかな」
「やめとけ。そんなに価値のある女じゃなかった。あれはもう搾りかす。生ゴミと同じだ」
「骨の髄までしゃぶりつくしたってか?」
「今頃死んでいる」
「へ? どういう意味だよ? まさか、お前……」
「ちげーよ。そんなことより、もっと楽しめる女はないか?」
サーブしていた店員は、彼らの背後に変な女が立っていることに気付いた。岳渕雄介を見ている。
(不気味な女がいる!)
店員だけに視えているようで、誰も気づいていない。むやみに騒ぎ立てると店長に叱られるので黙っていた。
女が岳渕雄介に抱きついた。頭から足まで体を撫で回し、最後に顔を噛んだ。
(げえ!)
されている岳渕雄介は、全然気づいていない。
店員は、ゾッとした。絶対に人ではない。
自分まで害が及ばないよう見て見ぬふりをする。
仲間が岳渕雄介の顔に黒いシミを見つけた。
「顔に黒いシミがあるぞ」
「は? 何のことだよ」
「たった今浮き出てきたような……」
「何バカなことを。酔ってんのか?」
岳渕雄介は、スマホの鏡アプリで自分の顔を写した。
あちこちに黒いシミが浮き出ている。
「いつ、ついた?」
手が汚れていたのかと確認するが、異変はない。
指でシミを軽く押すと、ブヨブヨして痛みを感じた。
「……腐っている?」
肩越しに自分を睨んでいる魔女がいることに気付く。
「ウワア!」
それが何者なのか。何しにきたのか。自分に何をしたのか。
一瞬で全てを悟った岳渕雄介は、「ギャアアアア!」と、絶叫した。
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