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真剣な口調で促した私に、彼は左肩に提げたスクールバッグをごそごそと探り、クリアファイルに入った診断書らしきものを手渡した。
早命病(犬型:ゴールデンレトリバー)
真っ先に目に入った病名に眉をひそめると、彼もそれに気づいたのだろう。医者の言葉を思い出すように、少し斜め上に視線をやりながら話し始める。
「前世が犬だった影響で、歳取る速度だけ当時の基準を引き継いじゃったみたいなんだ。人間の四倍だっけ? だから命が早くて早命病。俺、本来ならもう百歳過ぎたおじいちゃんらしいの。まぁ、犬種によって多少変わるし、世界的に見ると猫型もあるとか言ってた」
クリアファイルに入れられた紙切れには、なんだか堅苦しい言葉で診断日や医師の名前などが明記され、ご丁寧に押印までされている。本物である証のように。
それでも、
「そんなの……」
到底信じられる話ではない。あと三ヶ月で死ぬ? 彼が?
だいたい、その妙な病気はなんなんだ。前世だかなんだか知らないが、現実離れしすぎているし、百歳を超えているというわりに、彼の見た目は一般的な男子高校生と何ら変わりない。
何より、
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