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「あ…俺この光景…デジャヴ…」
男は、私の顔をまじまじと見つめてそう言った。
その言葉に、私はまさかと思った。
この男も、私と同じなのではないかと思ったのだ。
まさか、私と同じ夢を…?
「あなた…恭介さんじゃないのね?…あなたの名前は?」
「俺は…恭介じゃない。俺は…メグル」
「メグル…」
「あんたは叶夜…?」
私たちは火の手が回る建物内で、見つめ合った。
危機的状況なのは理解しているが、真っすぐに見つめてくるメグルの瞳に吸い込まれて、目が離せなかった。
「あ、早く逃げないと!崩れる…」
「そうだった…それで俺…」
炎が、熱風が容赦なく襲い掛かって来た。
―――あぁ、マズイ…
ガラガラズゴゴーーーン……
メグルは「危ない!」と、崩れ落ちてきた天井の瓦礫から私を身を挺して守ってくれた。私は私で、瓦礫の落ちてこないところへ向かってメグルに抱き着く形で体当たりをした。
「…っぶねぇ」
「…いっ…たぁ…」
メグルは尻もちをついている状態で、私はそのメグルの腕の中にすっぽりと納まっている。私の左の足先だけが瓦礫の下敷きになっているだけで、二人とも無事だった。
「足!大丈夫か?」
「…うん、平気」
夢の中のこんなわけもわからない状況で、ついさっき出会ったばかりのような私のために、メグルが体を張ってくれたことが嬉しかった。
そして、私の顔を心配そうに覗き込む優しい眼差しに、こんな状況にもかかわらず私は胸の高鳴りを覚えた。
どうしよう、夢なのに…
恭介を…メグルを死なせずに済んだらどうなるのだろう。
この夢は終わるの?
目覚めた時、何かが変わってるかもしれない?
正解もゴールもわからなくて、私は急に不安になる。
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