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「叶夜、その目どうしたの?腫れてるじゃん…何かあった?」
大学の講堂で玲奈が心配そうに話しかけてきた。
「おはよ…だよね、やっぱり腫れてるよね」と、私は自分の瞼を軽くつまんだ。
「朝起きたらすっごい泣いててさー…妙にリアルで悲しい夢だったんだけど…目覚めた時、心臓バクバクで号泣よ…それでこの目」
「マジ?夢でそんな泣くなんて普通ないよねー…実は闇抱えてる?半年前に分かれた元カレが忘れられないとか?」
「えー?そんなわけないし…」
闇なんて抱えていないし、ゲスな元カレに未練などあってたまるか…
夢の内容は断片的にしか覚えていない。けれど最近は同じ夢ばかり見ている気がする。もうかれこれ一カ月。そして、今日はいつもより長くてリアルだった。
火事の恐怖、大切な人との別れ、そして雪降る夜空の満月…
微かに残る記憶をたどると、建物や身に着けていたものが、現代のものじゃないような…
それにあれは…私?
朧げで曖昧な夢の記憶は、時間を置くごとに記憶からこぼれ落ちていく。
どうせ見るなら幸せな夢が見たいのに…
たかが夢なのに、大切な何かを忘れてしまっているような、喪失感とも何とも言い表せないような気持ちにさせられて、四六時中そんな感情に支配された。
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