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気がつけば私は恭介の腕の中にいた。恭介が私を庇って、崩れ落ちてきた瓦礫の下敷きになっている。
「っく…君…無事か?」
「無事です!恭介さん、ごめんなさい…私……わかっていたのにっ」
私はこうなることを知っていた。昨夜見た夢と同じ光景が目の前にあったのだ。
「ごめんなさい…ごめん…なさい」
恭介は力なく微笑んで「君が無事なら良かった」と、煤だらけの手で私の頬を撫でた。
「こんなことって……どうして…どうしよう…」
私は泣きながら、恭介の体の上の瓦礫をどかそうと必死に持ち上げたがピクリともしない。
パチパチメラメラと音を立てて数メートル先まで炎が迫ってきて、私は熱でまともに目が開けられない。それでも、私の目から涙が溢れ出す。
「恭介さん…ごめんなさい…私、小夜子じゃないのに…こんな…」
「そんなこと…君は小夜子の……うっ…君の名前を…教えてくれないか?」
「…叶夜」
「叶夜か、いい名だ…今宵、叶夜に会えて良かった…」
恭介は優しく微笑んでから、私を力強く突き飛ばした。
「きゃっ…」
私は体が宙に浮いたように感じて、視界が闇で覆われる。
「君は出会う…運命は…巡る…」
薄れる意識の中、そう聞こえた気がした。
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