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パチリと目を開くと、いつも目にする自室の天井がそこにあった。
夢か…よかった…
今度はちゃんと覚えている。
恭介さん…
私はやはり泣いていた。夢の中なのに、命懸けで守ってくれた恭介のことを思って、泣いていた。
私は、夢の余韻のせいでしばらく動けなかった。
迫りくる炎や、崩れ落ちた天井や柱、熱風、木の焼けるにおい、そして恭介に触れられた手や頬の感触…突き飛ばされた肩の衝撃…
夢だというのに、どれもがリアルに感じられた。
私は気持ちを落ち着かせようと、二の腕を両手でさすった。
なんでこんな夢…
何か意味でもあるのだろうか…
そんな風に考えていると、スマホから軽快な音が鳴った。玲奈から『起きてる?』というメッセージとふざけたスタンプ。
朝イチの講義があるんだった!
玲奈のおかげで、夢に置いてきた意識を現実に呼び戻すことができた。だが、そう思ったのも束の間。洗面台に向かった私は、自分の顔を見てギョッとした。頬に煤がついていたのだ。
え?どうして?夢だよ…ね…
私はその煤のついた頬を手の甲でゴシゴシ擦った。その煤は手の甲に着いて「あの時の…」恭介が私の頬に触れたことを思い出す。その時の感触も。
どういうこと?現実なの?
私は困惑した。何が起こっているのか理解できずに、煤のついた手の甲をじっと見ていると、その煤はみるみるうちに何もなかったようにすぅーっと消えていった。
幻覚?まだ寝ぼけている…?
奇妙な出来事の連続に頭がついていかず、私は考えることを一旦やめた。そして急いで出かける支度をして家を飛び出した。
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