月夜に夢の君と

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 和装の私は膝の上に白黒のモフモフの温もりを感じていた。ゴロゴロと喉を鳴らしたそいつは、まるっとした黒白のハチワレの猫だった。「お前可愛いにゃあ…」と撫でてやると、首に巻かれた赤い組み紐についた鈴がチリンと鳴った。    「…あ!」  私は辺りを見渡した。  日本家屋の和室。床の間に水墨画の掛け軸と、緑色の壺。  ―――あの、夢の世界だ。    そう思った瞬間、部屋の引き戸が開いた。  私は驚いてビクっと体を揺らすと、膝の上にいた猫がぴょんと跳ねて引き戸の方へ逃げて行った。    「あんた…誰?」  引き戸から猫を抱いた和装の男が入って来て、私に尋ねた。  「わ、私は叶夜……恭介さん…?」  この男、見た目は恭介だが、恭介じゃない…?    「俺は…」と、猫を撫でながら男は首を傾げて何やら考え込んだ。  私は急に大事なことを思い出して、部屋の外へと飛び出した。和室の外側の引き戸を開けるとそこは縁側になっていて、その先は庭になっていた。  鼻の奥をツンと刺激するような冷たく乾いた冬の匂いがして、寒さで全身が粟立った。私は白い吐息を吐きながら、空を見上げた。  真っ暗な夜空には、まんまるのお月様が張り付いていて、私を優しく見つめた。  満月ということは、あの状況が起こるということ…  私は、縁側から怪訝そうな顔で私を見ている男に「ここから逃げなきゃ…恭介さんが…」と、訴えた。  「ちょっと待って、恭介って俺?状況が飲み込めない…それに、あんたは何者?」    何?何で?恭介はどこ?この人は誰?私は恭介を助けたくて…  ―――私は恭介を助けに来た!?  そうか、少しずつ時間が(さかのぼ)っている…  私は恭介を助けるために来たのだ。  この夢の意味…  そういうことなのかも!
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