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「さっき、あいつがいたけど、あいつがまだ日が出てるうちに来るなんて初めてだった。何がしたかったのかは分からないけど、多分、牽制のため。誰か、他の女といたときの」
そう言って、深田は言葉を切った。
「……でも、深田は恣羅さんのこと、嫌いじゃないんだよね?」
「いや、俺はあいつが嫌いだよ。それに、自分も嫌いだ。誰も、何も、守れなかった」
深田は私を見て自嘲気味に言った。
「……私は、深田のこと、好きだよ。そうやって、過去に問題を抱えてるのに、いつだって優しくて、私を笑わせてくれようとする。他人のために自分を傷つけられる、優しい人。たまには、弱みを見せてくれたっていいんだよ?」
私は、本心から思ったことをそのまま口にした。
のに、
「………………はっ、えっ?」
大きく間を空けて、深田は驚いたように呟いた。
私は、自分の発言をよく思い出し、そして赤面した。
「いや、あの、好きって別にそういうわけじゃ……っ!」
「……わかってるけどさぁ。ほら、破壊力が違うじゃん。てか、それはそれでなんか複雑なんだけど」
“いつも通り”に戻った深田。
もし、今ここで、私が弱音を吐いたらどうなるのだろうか。
深田は幻滅するのか。優しく寄り添ってくれるのか。拒絶するのか。慰めてくれるのか。
だけど、私はそんな勇気を持ち合わせていない。
だから、仮面をかぶる。
例えもうバレていたとしても、私は仮面をかぶり続ける。
花綵のんを演じるのだ。
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