「付き合ってんの?」

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「付き合ってんの?」

その日の昼休み、意外にも楠木に呼び出された。 「ね、のんのん。本当に白澄となんもなかったのか?」 なぜ、彼が私と深田についてそこまで知りたがるのか分からない。 「本当になにもなかったよ。それがどうかした?」 私が問いかけると、楠木は少し間を空けて、それからゆっくりと口を開いた。 「単刀直入に聞くよ。のんのんは白澄と付き合ってんの?」 「………え?」 あまりにも急すぎるその質問に、私は驚き固まった。 「いや、俺昨日さ、夜散歩してたんよ。んでそしたらさ、のんのんのことお姫様抱っこして歩いてる白澄を見かけたの。夜遅くに高校生男女がお姫様抱っこで歩いてんだよ。そら、付き合ってるとしか思わんよ」 まさか、楠木にも見られていたなんて。 いや、でもこの様子じゃ私が泣いていたのを見たわけではないのだろう。 というより、“なにかがあった”ことを知っていて、「何かあった?」とか聞いてたのか。 「付き合ってないし、私昨日深田となんて会ってないよ?」 あくまでも会っていないを前提に。 あくまでも冷静に、あくまでも普段通りに。 「いや、俺しっかりあとつけて『花綵』って表札確認したよ」 平然とストーカーじみたことをするな。 「なに、怪我でもしてたの? 寝てたの?」 お姫様抱っこをされていた意味を問われる。 「………わからない。多分寝てたんだと思う」 仕方ない、と私は深田と会った事実を認める。 「あれ? じゃあなんで白澄はのんのんの家知ってたんだ?」 「前に何度か呼んだことがある」 「は? 白澄だけ? ずるー」 なぜずるいのだ。 「てか、その呼んだときってのは親いたの?」 「いなかったけど」 「えー。高校生男女が2人っきりでなんにもなかったの?」 「なかったよ。逆に、なにがあるの?」 「えー………。白澄って意外と草食系なんだな」 なんにせよ、これからは絶対誰にも見られてはならない。 私があんなに弱いやつだと知れたら、きっとみんなが幻滅する。 だから、絶対に見られてはいけない。 私が人気者であるために。
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