PROLOGUE

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耳元に響いてくる。 地面とバッシュの擦れる音。 観客から溢れ出す、期待と興奮をはらんだ声援。 緊張で揺れる、プレイヤーの掛け声。 それらのすべてが、私の鼓膜から、皮膚から、全身から体内へと滑り込み、ざわざわと落ち着きなく動いている。 2年間きいてきた音のはずなのに、1つ1つが真新しいもののように感じてどこか落ち着かない。 ビーーーーッ 試合開始の合図のブザーが鳴る。 プレイヤーがコートの中心へと集まる。異なる5種類の数字が横1列に並んだ。 途端に5人が後ろを振り返る。 それにつられ、ベンチ内の8人の仲間たちも、その視線の先を追う。 その13本の線を結んだ先にはには、私がいた。 線の交わりの中に、言葉は生まれなかった。 ただ、13本の線が、ちぎれることのない、1本の太い管となって、私とプレイヤーとを結びつけていた。 アリーナに沈黙が訪れる。 5人は元の位置に視線を戻し、相手のプレイヤーと視線を交える。 「お願いします」 審判がボールを投げる。 アリーナ内の全ての視線が、期待が、 1つのボールへとぶつかる。 さあ、最後の試合が始まる。
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