38)自責と愛情の狭間で

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38)自責と愛情の狭間で

蒼は自宅に戻ると、碧がいつものように出迎えた。 「あのね…碧さん」 (碧さんなら、翡翠さんの事をわかってくれるかも…) 俺の体の変化に対する混乱に、寄り添ってくれた碧さん… きっと、翡翠さんの事も理解してもらえるよね… 蒼が翡翠の事を話そうとした瞬間、蒼の携帯電話が鳴った。 発信先は、優陽だった。 蒼は凍てつく心を抑えながら、優陽の電話に出た。 「優陽さん、どうしたんですか…?」 『蒼くん、今すぐ来れないか?』 『翡翠が…いなくなった…』 「え…!?」 切羽詰まった優陽の一言に、一瞬にして凍りつく蒼。 「いなくなった…って、どういう事ですか?」 『僕が朝、所用で出かけた隙に居なくなってた。書き置きはなかったけど、翡翠の荷物がないんだ…』 優陽の落ち着いた口調の中に、心配な様子が漂っている。 「わかりました、今直ぐそちらに行きます!」 蒼は電話を切った。 (俺が…原因なのか…?) (俺のせいで、翡翠は苦しんでしまった のかな…?) 翡翠と別れ際の激しくも哀しげな表情を思い出し、胸が痛む。 「蒼…どうした?」 心配そうに覗き込む碧。 寄り添う気持ちに、蒼は思わず縋りたくなった。 「ごめん…碧さん、急用出来た。ちょっと行ってくる!」 「蒼…!?」 (翡翠さん、待ってて!) 蒼は碧を振り切り、翡翠を探す為に再び家を出た。
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