4)藤の絆

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4)藤の絆

蒼の背中には生まれつき、薄紫色の藤が施されている。 蒼が小学校に入学するとき、碧は校長や教頭、担任教師に話をし、以下を約束事とした。 ・生まれつきであり、消せないこと ・その事でいじめをしない、もし何かトラブル等あればすぐに連絡する ・子供達に真似をさせない(自分も蒼くんみたいになりたいと、背中に彫る行為 校長以下、最初は驚いていたが、幸い理解を示し、子供達も理解を示し、トラブルの発生はない。 この小学校では「児童の良いところを認め、褒め合う」ということを実践し、帰りの会や事あるごとに発表していく、という習慣があり、子供達も良い意味で個性を尊重し合っていた。 「蒼の背中に咲く花、きれいだね」 「ああ、これは藤の花っていうんだよ。雨が降るように咲くんだよ」 体育の着替え中、蒼の背中の藤が周囲に少し見える。何気なく言ったクラスメイトの一言に、蒼は嬉しそうに返す。 「雨が降るように咲くって、珍しい花なんだね!」 「わたしも見てみたーい!」 意外にも、蒼の子供達が藤の花を知るきっかけや、好奇心を抱く事にも繋がった。 蒼は他にも、春から初夏にかけて咲き、雨が降るように花を散らす事、木の幹は幾重にも絡まって物凄く固かったり、花は紫の他に白もある、と。 紫と、白ーー 何となく、潤さんと碧さんみたい… 蒼は話しながら一瞬、胸が熱くなった。 『藤の花はね、大切な人との絆を繋ぐんだよ』 事あるごとに、碧が蒼に言い聞かせている。 いつか、潤さんが言ってたと。 その意味を子供心に、蒼は理解していた。 姿は見えないけど、潤さんもいつも一緒にいる気がするーー 「潤さんも、藤の中にいるんだよね…」 蒼は自らの背中に咲く薄紫色の藤の花に、そっと呟くと、友達を追いかけて校庭に出た。
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