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夢佳姫はダイエットに、懸命に取り組みました。
順調に行くように見えたダイエットも、いつしか陰りが見え始めます。
ダイエットを始めてすぐに2kgの減量を果たしたものの、そこから先がなかなか進みません。
エステのお陰で肌荒れは改善したものの、体重はやっとこさ3kg減。
費やすのはお金ばかりではなく、ジムやエステに通う時間も消費されます。
結婚式が近づくにつれ、披露宴の食事内容や席決め、引き出物の選定や、ウェルカムムービー、2人の紹介ムービーの作成・編集にも追われ、夢佳姫のキャパもいっぱいいっぱい。
そんなとき、快王子が仕事の都合で合流できないことが続いたり、
夢佳姫との約束を忘れて、職場の面々と飲みに行ってしまったりすると、
呆れるというか、悲しくなるというか、夢佳姫もイライラしてしまうもの。
これは逆も然りで、快王子にとっては、
挙式直前の忙しくなってきたときに、
ジムやエステ通いに時間を費やし、お金もかなりの金額を費やす夢佳姫に、あまりいい気分は持っていませんでした。
それに加え、夢佳姫は最近怒りっぽくなってきたこともあり・・・
挙式が近づくにつれ、2人の間にケンカが増えてきます。
ケンカをした後、
決まって夢佳姫は寂しくなります。
このまま、快王子と結婚して、私は幸せになれるのだろうか?
結婚式のために努力をして、そんな努力が報われない。
イライラして、相手のことも思いやれない。
そんな自分がイヤになります。
夢佳姫は、今日も快王子とケンカをして家に帰る途中、星空を眺めながら北の賢者の言葉を思い出します。
『結婚前はストレスたまるから、ある程度がんばったら、やっぱりご褒美は必要だよ』
「ご褒美かぁ・・・」
『ケーキは食べていいけど、砂糖少なめのスフレチーズケーキにしてね』
スックと思い立ち、夢佳姫はカバンからスマホを取り出します。
そうして、いつもいちばん電話している人に、電話を掛け・・・
「あ、もしもし、快くん?さっきはごめんね。でさ、今度の休みに、一緒にケーキ屋さん行かない?たまには息抜きで」
どうやら夢佳姫も、ひとつの峠を越せそうです。
◆◆◆◆◆
そして結婚式の当日。
挙式には東の賢者も、西の賢者も、北の賢者も呼ばれました。
ダイエットの成果はというと、
体重はやっぱり3kg減止まり。
肝心の二の腕は、といえば・・・・
ここは、いちばん効果が現れにくいところ。
夢佳姫と東の賢者、西の賢者、北の賢者の4人は、結婚式の前々日に、独身最後の飲み会をしたのですが、
そのとき
「夢佳、ダイエットよくがんばったよねー!」
と3人の賢者は、労をねぎらうのですが当の本人は浮かない顔。
腕をさすって、
最後まで二の腕のことを気にしているようでした。
「ここは、最後の魔法をかけなくっちゃね」
結婚式場の待合室で、北の賢者が2人に相談を持ち掛けます。
「なにそれ?魔法って」
東の賢者も西の賢者も、北の賢者の提案に耳を傾けます。
「ねぇ、聞いて」
そうして北の賢者が2人に、こっそり耳打ちをします。
「誰か、新郎の快さんを連れてきてくれない?」
◆◆◆◆◆
新婦の控室。
夢佳姫はノースリーブのウェディングドレスに身を包み、スタイリストさんにヘアアレンジをしてもらっていました。
そうして最後に、メイクを整えてもらいます。
コンコン
ノックの音が響くドアを、夢佳姫が振り返ると、
遠慮しがちに、新郎の快王子が顔を覗かせました。
「入っていい?」
「いいよ。ほら、こんなんなっちゃいました」
派手に巻き上げられたヘアスタイルと、いつもより大柄なメイクをした夢佳姫が、はにかんで笑いかけます。
「うわー」
ドアを後ろ手に閉めて、快王子が夢佳姫の脇まで歩み寄ります。
「あれぇ?夢佳ってこんなに細かったっけ?」
「え?」
「衣装合わせで見たときより、今日はずいぶんドレス、着こなせてるんじゃない?」
「え、そうかな?」
夢佳姫がスタイリストさんに視線を送ると、
スタイリストさんも、ニッコリと微笑みかけてくれました。
「夢佳・・・」
「え?」
夢佳姫が快王子に呼ばれ、振り返ります。
「こんなにキレイな女性と結婚できるなんて、オレは幸せ者だ」
「快、くん?」
「夢佳、幸せになろう?」
「うん」
「夢佳」
「快くん・・・大好き」
◆◆◆◆◆
こうして、2人は無事に結婚式を挙げ、
その後も幸せに、暮らし続けたのだとさ。
めでたし、めでたし
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次回は西の賢者、緋真理のお話です。お楽しみに(笑)
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