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街コンの後半は、不動尊の縁日を巡るフリータイムだ。
主催者の合図と共に、参加者がぞろぞろと縁日の屋台へと足を運ぶ。
私はここで奈々子と別れ、別行動に移った。
そうしてまずは、2~3人いたはずのイケメンの行方を探す。
いた。
女子がわらわらと集団で群がっている。
その女子集団の真ん中に、イケメンはいた。
--よしっ!
私は、自分の『先見の明』を褒め称える。
ナイス読み。
あそこに加わるのは、時間を浪費するだけ。
私は明弘さんを、目指すのだ。
すると、
金魚すくいの屋台の前で、所在なさげに金魚を眺める明弘さんの姿をみつけた。
「こんにちはー」
私は、笑顔で明弘さんに声をかける。
「あぁ!・・・えっと」
私は自分のプロフィールシートを胸の前に掲げる。
「武市 緋真理ですー」
すると、明弘さんの表情が明るくなった。
「あぁ!あの、面白い娘と一緒にいた!」
「そうです。金魚がお好きなんですかぁ?」
そうして私は、少し可愛い子ぶって、
明弘さんの隣にすり寄り、金魚をのぞき込んだ。
◆◆◆◆◆
こうして無事に明弘さんの連絡先をGetした私は、
第二、第三の恋人候補者を探して、縁日をさまよう。
しばらく行くと、またわらわらとした女子集団に出くわした。
やはりまだ、ずっとイケメンの周りはこんな状態なのだろう。
そう思い避けて通ろうかと思ったら・・・
なんと!
集団の中心には、例のイケメンと、奈々子が楽しげにおしゃべりしているではないか?
--な、奈々子?
そう言えば、聞いたことがある。
奈々子に彼氏ができないのは、『超』がつくほど面食いだからである、と。
奈々子の、イケメンに対する執着力は末恐ろしい。
その執着力と行動力におののきながら、私は知らない人のふりをして別のターゲットを探し歩いた。
◆◆◆◆◆
そうして私は、3人の性格よさげなフツメンと連絡先を交換した。
初めての街コンの割には、3人の恋人候補と出会えるなんて、これは効率的?
そろそろフリータイムも終わる。
私はご満悦で屋台をブラブラしていると、後ろから奈々子が声をかけてきた。
「どうだい、緋真理。出来は上々?」
「あ、奈々子!あなたこそ!」
イケメンとは、どうなったのだろう?
「ところで話題の『焼き芋の屋台』に行きたかったんだけど、どこにあった?」
と奈々子が問うので、
私たちは、街コンの締めくくりに『焼き芋の屋台』を探し歩く。
しばらく歩くと『焼き芋の屋台』はみつかって、
よく見るとそこには、焼き芋を選んでいる明弘さんの姿があった。
「あ、明弘さん!またお会いできましたね」
運命的な出会いを装って私は、にこやかに明弘さんの隣に陣取る。
そんな私の様子を、
後方から奈々子がニヤニヤしながらこっちを見ている。
・・・うう、やりにくい
友達の前で、男に媚び売る自分の姿は、どれだけ滑稽に見えているのだろうか?
普段から私は、奈々子のボケに対して厳しくツッコむ役回りをしているので、
逆にツッコまれる立場になると、弱いのだ。
「おやおや、ご両人。この屋台の『芋占い』はご存じか?」
やはりご満悦な表情で、後ろから奈々子が声をかけてきた。
わざわざ『ご両人』なんて言っているので、奈々子のことだ、きっと何か変なことを考えているはずだ。
「『芋占い』って?」
とりあえず奈々子の話題に乗ってみる。
奈々子は、得意げな顔で『芋占い』について説明を始める。
屋台で売っている3種類の焼き芋を選ぶと、その芋の種類で、選んだ人の性格が分かるのだという。
お芋は『紅あずま』『シルクスイート』『安納芋』の3種類。
私は『紅あずま』を、
明弘さんは『シルクスイート』を、
奈々子は『安納芋』を選んだ。
「まず『紅あずま』を選んだ緋真理は・・・」
奈々子はスマホで検索する素振りをして、診断結果を発表する。
「粉っぽいホクホク系の『紅あずま』は『規則正しく勉強熱心な平和主義者』と出ておる」
意外と当たっていることを言う。
それは奈々子は、私がどんな性格なのか知っていて当然だろう。
「そしてしっとり系の『シルクスイート』を選んだ明弘さんは『好奇心旺盛で頼もしい目標達成の持ち主』」
「おぉぉ~!」
私は、拍手して盛り上げる。
奈々子が気を遣って、明弘さんにはいいことを言ってあげたのだろう。
「最後に、ねっとり系の『安納芋』を選んだ私は『気遣いのできる縁の下の力持ち』と出てます」
「いや、それウソじゃん」
思わず出た私のツッコミに、明弘さんも笑う。
「そうして『紅あずま』を選んだ緋真理と、『シルクスイート』を選んだ明弘さんの相性は・・・100%ピッタシ抜群と出ております!」
結局、それが言いたかったのね。
奈々子なりに気を遣ったのか。
『気遣いのできる縁の下の力持ち』だからね(笑)
◆◆◆◆◆
そうこうしているうちに街コンも終了時間を迎え、不動尊駅前まで戻り解散となる。
解散する前に『連絡先交換タイム』という時間を設けられ、結局私は13人の男性と連絡先を交換した。
あまりにも連絡先が増えたので、
もう誰がどの連絡先なのか判別不能になり、
結局、明弘さん以外の連絡先は使い物にならなくなってしまった。
でも、いいのだ。
本命がひとり、残っていれば。私は。
こうして私と奈々子の、奇天烈な街コンは幕を閉じる。
◆◆◆◆◆
その後日談。
私と明弘さんは、トークアプリで何度かやりとりを重ね、
一度、ランチデートをした。
なかなか、いい雰囲気になった。
しかし、その後は・・・
お互いにトークアプリの頻度が減ってきて、なんだか疎遠になって、
結局、自然消滅した。
やはり、好きでもない相手と関係を続けるのは、相応の努力を続けなければいけない。
その努力がおっくうになる相手とは、長続きしない。
相手を『好き』と思えることが大事だと、改めて思った。
それは、私にとって高い壁だった。
私は奈々子にも、その後の恋の行方を電話で聞いてみた。
驚いたことに奈々子は、街コンでは誰とも連絡先を交換しなかったと言う。
「あのイケメンとは、連絡先交換しなかったの?」
と聞くが、
「イケメンでも一般人だと、話が合わないんだよね・・・」
などとほざく始末。
奈々子に言わせると、
『コアな話ができるオタクで、なおかつ顔がめちゃイケメン』
が理想なのだという。
そんな人、存在するのか?
そう思い、私より奈々子の方が心配になってきたが、
当の奈々子は、男には不自由していないという。
なにそれ、どういうこと?
どうやら奈々子には、一緒に飲みに行くオタク友達がたくさんいるので、
ひとり身が寂しくて仕方なくなったとき、なぐさめてもらう相手には事欠かないらしい。
なんだそれ?
私の知らない世界。
もしかして、ねっとりとした関係?
そうだ『安納芋』だ。
そう言えば奈々子は、占いでは、ねっとりとした『安納芋』なのであった。
そう思うと私は、
粉っぽいホクホク系の『紅あずま』で、よかったと思った。
私は電話越しに、
「子供だけは作らないでね」と、
奈々子に余計なアドバイスだけして、そっと受話器を置いた。
- 終 -
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次回は、そんな奈々子のお話です。お楽しみに(笑)
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