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月と亡霊
ある晩、私は月明かりの下を歩いていた。
街の喧騒から離れ、静かな公園に足を運んだ。
月の光が木々の間から差し込み、神秘的な雰囲気を醸し出していた。
私はベンチに座ると深呼吸をする。
心地よい風が吹き抜け、心が落ち着いていくのがよくわかった。
すると突然、月が一際明るく輝き始めた。私は驚き、その美しさに見蕩れて目が離せなかった。
暫く眺めていると、月の光が次第に形を変え始めた。まるで人の姿が浮かび上がるかのように、
そんなことを考えているうちに、月の表面に影が現れた。
夢か誠か幻覚か…目を疑ったが、確かにそこには人の姿があった。
その姿は美しく、優雅さを感じさせるものだった。
月の光がその姿を照らし、輝きを放っていた。
私は興味津々で近づき、その姿をよく見ようとした。
すると、その姿が私に微笑みかけた。
その微笑みは穏やかで、心地よいものだった。
私は思わず微笑み返し、その存在に引き寄せられるように近づいていった。
月の光が私たちを包み込み、時間が止まったかのような感覚に陥った。
その人影がなんなのか、近づいてやっと分かった、私たちは言葉を交わさずに、ただただ互いを見つめ合っていた。
その瞬間、オカルト好きだった私はそれが何らかの亡霊であることを悟った。
亡霊は私に手を差し出し、私はそれを受け取った。
その瞬間、私の体は軽くなり、浮遊するような感覚に包まれた。
私はその亡霊を敦貴と呼んだ。
どうしてこんな状況が出来上がっているかの検討がつかないけれど、事故で失った恋人・敦貴と共に過ごす時間だと思えば、まるで夢のようだった。
敦貴を失った孤独から、敦貴が私のことを心配して天国から舞い降りてきてくれたのかもしれない…なんて非現実的なことを考えてしまうぐらい、それぐらい今の現象と今宵の月は幻想的だったのだ。
しかし、時間はいつものように流れていく。
私たちは公園のベンチに座った。
そして亡霊は微笑みながら私に別れの言葉を告げた。
私は頭を下げると、感謝の気持ちを伝えた。
そして、亡霊が消えるのを見送った。
それからというもの、私は満月の夜になると公園に足を運ぶようになった。
しかし、あの日以降亡霊を見ることはなかった。
それが淋しくて、月の光を浴びながら、あの日のことを振り返り、涙が出そうになったが、グッと堪えた。
あの日の出来事は私の人生に大きな影響を与え、心に深く刻まれ
月夜の遭遇は、私にとって一生忘れられない特別な体験となった。
それから3年ほどが経ち、私は成長し、新たな人生の節目を迎えていた。
思いついたように外に出た私は一人で散歩に出かけていた。
街灯の明かりが少なく、街は静まり返っており、歩いていくと、遠くから響く虫の鳴き声が耳に響く。
月明かりの下、私は公園に立ち寄った。
公園は静かで、誰もいないベンチに座り、月を見上げると、その美しさに心が洗われるような感覚に包まれた。
満月の夜は静寂が広がっていて、月が空高く輝き、その光が周囲を照らしている。
風は穏やかで、木々の葉がそよそよと揺れている。
この月を見ると3年前のあの月夜のことを思い出してしまう。
あのときのように私は深呼吸をしながら、月に願いを込めた。
『敦貴に、もう一度逢いたいよ』
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