山田くんと先生 悪霊退治編

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 田中さんは、襲って来る悪霊をばっさばっさと斬り捨てた。  斬られた悪霊は、まるで灰の様にさらりと粉々になり、流れて消えた。  山田くんは、信じられない思いで、勇ましい田中さんの姿を見ていた。 「せんせい。先生!」  山田くんの声に、先生は、目を覚ます。 「あ・・あれ・・」 「終わりましたよ」 田中さんが、腰を曲げて先生をのぞき込む様に言った。  先生は、倒れて、そのまま山田くんに抱きかかえられていた。   山田くんは、いつか教室で見た夢を思い出していた。  先生の身体の温かさに安心していた。  先生の横にしゃがんでいた小林さんが、 「先生って、結構見た目も中身も完璧って思ってたけど、幽霊ダメだったんだね」 と、からりと笑って言った。  先生は、情けなく、苦笑を浮かべる。 「まあな・・」 「先生、恥ずかしい事はありません。大抵の人は、幽霊ダメですから」 と、田中さんが、大真面目に言った。 「そ、そうか」 先生は、立ち上がった。 「悪いな、田中。一人でさせちゃって」 「いいえ。先生こそ、苦手なのにわざわざ来てもらって、お疲れ様です」 「田中さん、すごいね」 山田くんが、言った。  小林さんが、一瞬、何か言いたそうな顔をしたが、気付かない山田くんは言葉を続ける。 「悪霊退治してくれて、ありがとう。怪我しないで良かったよ」 「え」 「そうだよ、まゆちゃん」 味方を得た様に、小林さんが、言った。 「あっちゃん・・」 「霊感があるって言っても、普通の人間なんだからさ」 「・・・」 「しんどい時は、しんどいって言って良いんだよ。ダメな時はダメって断って良いんだよ」 「あっちゃん・・」 田中さんは、思わず目を潤ませた。 「まゆちゃん」 二人は労わる様に抱き合った。 「ごめんね」 「大丈夫だよ。本当に今日は、無理してないから」  山田くんと先生は、安心した様に微笑みあった。
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