第9話

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「わぁ〜!かっわい〜!!」 「あう?」  ……週末。  京都郊外にある真嗣のマンションに、藤次は家族を連れて赴き、彼の元妻嘉代子と、娘の可奈子と顔を合わせた。 「ママぁ、見て見て?オジさんの赤ちゃん、とっても可愛い!」 「ホントね。けど、良かったじゃない棗君。奥さんの遺伝子が有能で。」 「へぇへ。姐さんの毒舌も、今日の事考えたら甘んじて頂戴するわ。」 「ははは…」  目の前でバチバチと火花を散らす藤次と嘉代子に辟易しながら、真嗣は、やはり苦笑している絢音の元に行く。 「じゃあ絢音さん、そろそろ…」 「あ、はい。…ほーら藤太。谷原の小父様よ〜」 「あー…」  あやしながら、自分の腕から真嗣の腕に藤太を抱かせると、彼は慣れた手つきで腕の中の藤太をあやすと、彼は楽しそうにはしゃぎだす。 「よしよし。嘉代子さんじゃないけど、ホント藤次の子とは思えない良い子だね。ほーら。」 真嗣がバアと笑って見せると、藤太は益々はしゃぐので、藤次は忽ち不機嫌になる。 「なんやねん。ちょお早よ父親業やっとっただけやろ!!ワシかてなぁ!」 「ち、ちょっと藤次!!」  そう言って自分から藤太を取り上げようとする藤次の首根っこを、問答無用に嘉代子が掴む。 「か、嘉代子さん?!」 「な、何すんねん姐さん!?」  瞬く2人に、嘉代子は盛大にため息をつく。 「あのねぇ、あなたこれから、私達に子供預けて、奥さんと2人で一泊デートに行くんでしょ?いつまでも子供子供言ってないで、奥さん相手してあげなさい!!」  言って嘉代子は、部屋の隅で縮こまっていた絢音に藤次を突きつける。 「あ、あの…」  怯える絢音に、嘉代子はニコリと笑う。 「楽しみにしてたんでしょ?顔に書いてある。可愛い赤ちゃんは、私達が責任持って面倒見させてもらうから、早く行ってらっしゃい。」 「あ、はい…」 「姐さん…」 「ほら、早く!」  そう言って2人を見送る嘉代子に、真嗣がニコニコと笑っているので、忽ち彼女は赤面する。 「な、何よ。」 「いやあ、存外2人とも、似たもの同士かなぁって。」 「なっ!?」 真っ赤になる母と、ニコニコ笑う父を不思議そうに見つめながら、可奈子は揺籠に移された藤太を見やる。 「オトナって変なの。ね、藤太君。」 「ぶ?」 目をクリクリさせる藤太を見つめながら、可奈子は乳繰り合う両親をよそに、藤太の子守りを始めたのでした。
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