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「輝夜、貴方は十八歳になって最初の満月の日、月からお迎えが来ます」
小学校に入る前、他の子の親と比べると幾分歳をとった両親からそう言われた。
なんでも、私はかの有名な「かぐや姫」の子孫らしい。かぐや姫の血筋の者は初代かぐや姫のように幼少期は地上で育てられ、成人するとともに月から迎えが来る。
深夜でも人工の明かりが眩しい現代、天女が月から下りてきたら写真とか撮られて大問題になるのでは? と思うが、今までそういう事が無かったから大丈夫なのだろう。
きっと迎えの天女も現代風の格好で迎えに来てくれるのかもしれない。
私は窓の外に広がる夜空を眺めつつ、「ほぉ」と小さく息を吐いた。
紺青色の空には小さな星々の明かりと小望月。明日は満月だ。いよいよ明日、私はお迎えとともに月に上る。
迎えに来た天女とは仲良くなれるだろうか。月とはどんなところなのだろうか。月には雑誌やテレビに代わるようなものはあるのだろうか。
そんな様々な想いを抱きつつ、地上での最後の夜を噛み締めた。
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